所用で都内を走り回っていた10月29日、最後にたどり着いたのがJAZZ・STREETSに併せて遠藤鋼児が個展を開催している阿佐ヶ谷である。阿佐ヶ谷は、筆者が19歳から20歳という青春の多感な時期を過ごした(笑)思い出深い街。メインストリートには、ケヤキ並木が、そして住宅地にも緑多き静かな街なのであるが、夏のたなばた祭りと、このJAZZ・STREETSの開催日はちょっと違う。街全体が、イベント会場になるからだ。
このイベントがスタートして10年。筆者が住んでいる頃に、このイベントがあったら、きっと引っ越してなかっただろう。なんて、今頃思っても仕方が無いか。

駅頭に立って私が一番最初に驚いたのは、もうジャズがそこから始まっているのである。南口には櫓を組んだ大きなステージ。北口には路上で、ガード下にも、いたるところがJAZZの会場なのだ。公式パンフレットを貰い、ざっと地図を見ると、駅周辺だけではなく、かなり広範囲にライブ会場がある。ざっと数えてみると、30箇所以上でライブが行われているというわけだ。しかも、ストリート会場は無料なので、地図を片手に好きなアーティストの演奏している場所に歩いてゆく、などという楽しみがある。
南口の駅前にはこのイベントのための案内所が仮設され、同じスタッフジャンパーを着た実行委員の方々が積極的にパンフレットを道行く人に渡している。警察も、地元のお年寄りもこのイベントに多数参加している。以前、横浜のJAZZ祭り(正式名は失念)に行ったことがあるが、これほどまでに地域を挙げて協力しているような印象は無かった。もっとも横浜自体が大きな街過ぎて、毎日がイベントのようだし、焦点がぼけてしまうのは仕方が無いことなのだが。
阿佐ヶ谷JAZZストリートの目玉は、地元出身の山下洋輔である。また、ジャズボーカルの大御所、マーサ三宅も出演する。他にも有名どころはいるが、しかし、無名といったら失礼だが、売出し中の、あるいはアマチュアのバンドが多数出演しているところが阿佐ヶ谷らしい点かもしれない。
この日、金曜日の夕刻、会社帰りのサラリーマンがひょいと立ち止まって、JAZZを聴いて帰る。そんないい感じの光景があった。また、路上ライブの演奏を熱心に聴いているご年配の方々が盛大な拍手を贈っているのも印象的だった。
JAZZというと、どうも熟年世代が聴く音楽というイメージだと思われるが、若者も熱心に聴いていたし、今風の女子高生も立ち止まって、うっとり聴いている。とにかく幅広い世代がオーディエンスなのだ。
阿佐ヶ谷JAZZ
STREETSの特長
このイベントの最大の特長を挙げるとすると、その名の通り、路上ライブに重点が置かれている。路上ライブは非合法に都内の主要ターミナル駅、駅周辺などで開催されているが、こうやって、堂々と、しかもいたるところでとなると、なんと壮観であり、実に面白い。商店街、住民、警察の同意を得て、きちんとやるというのも難しいし、物凄いパワーがいるのだろう。企画運営している方々に拍手を贈りたい。
我が千葉市でも「Bay
Side
Jazz」が恒例となっている。しかし、幕張の住民にとって、なぜか遠い存在だし、開催していることを知らない人も多い。会場が千葉市の中心部だから仕方ないのかもしれない。が、明らかに阿佐ヶ谷と異なる点は「Bay
Side Jazz」が市内のライブハウスをメインとして行っている点だ。
もちろん、「Bay Side
Jazz」も中央公園で無料の屋外ライブも開催しているし、公共ホールでのライブもやっている。だが、阿佐ヶ谷の場合、あくまでも路上ライブという部分に重点が置かれている。そこが、街全体で盛り上がっているような印象を与えているのだ。また、小学校や中学校の体育館、病院の講堂、専門学校、教会など、普段あまりJAZZを聴く場所でないところ、つまりどこでもジャズをやってしまうというところが、とても好感を持てる。
俺達のホームページでは以前、「ベイタウンを音楽の溢れる街にしよう」という提案というか理想を掲げたが、まさに、阿佐ヶ谷のJAZZ
STREETがそれを実践していたわけだ。千葉市も、こういう良いところを見習ってゆけばいいと思った。 (阿佐ヶ谷はアーケードなどの雨の心配が無い施設が多いことも路上ライブがやりやすいのかもしれない。)
究極のジャズパフォーマンス
一曲200円也のトランペットによる「人間ジュークボックス」
阿佐ヶ谷駅のガード下に次々に聴こえてくるジャズのスタンダードナンバーに私は思わず吸い寄せられていった。そこには黒山の人だかりが出来ている。トランペットは写真のおじさんが吹いていた。黄色いボックスの中で演奏している。写真ではわかりにくいが、片手にはタンバリンを持っている。
これぞ、人間ジュークボックス。ボックスの中央やや右側に自販機のようなコイン挿入口があり、そこに200円入れると、高らかなファンファーレとともに、フタがパカッと開き、いよいよ人間ジュークボックスの始まりである。1曲といっても、長めも曲も殆ど端折ることなく、演奏してくれる。レパートリーは、数百曲。その他にも即興でなんでもリクエストを聞いてくれる。ちなみに、500円入れるとお釣りも出てくる。

ちょうど帰宅ラッシュと相まって、どんどん観客が増えてゆく。そして、次々へコインが入れられ、次々に演奏してゆく。突然、「ウルトラマンをやってくれ!」とか、「ルパン3世が聴きたい!」というリクエストにもにこやかに対応する。これぞ、まさしく究極のパフォーマンスではないか。
演奏が終わるとおじさんが一礼して、扉がパタンと閉まる。その時、ひゅるるん(アニメなどで良く使われる音)という笛の音とともに閉まるのだ。もちろん、この笛もおじさんが吹いているのだが、スタート時の勢い良く開くのと好対象で面白い。そして、ドラが鳴る。
遠藤鋼児も参加していた
幕張在住の画家・遠藤鋼児も阿佐ヶ谷で個展を開いていた。場所は、「スペースさとみの」という駅に至近の一等地。すぐ目と鼻の先でジャズのライブをやっている。ここで、遠藤はJAZZに因んだ、数々の作品を売っていた。 |